コミュニケーション能力と学び(覚え書き)

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◆届いてるんだ。

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突然のメール失礼いたします。私は、広島大学教育学研究科(国語)修士1年・幸坂健太郎と申します。研究内容は「論理的思考力を育成する国語カリキュラム」の研究です。研究を進める中で、先生の論文、著書(『「議論」のデザイン』)に出会いました。先生の論は、自分の中で新鮮な論でした。

メールさせて頂いたのは、先生の著書の内容に関することです。私は、まだまだ勉強不足であり、ゆっくり先生の著書を読ませて頂いているのですが、第7章にきたところでどうしても理解できなくなってしまいました。著者である牧野先生に伺うのが一番良いだろうと判断し、失礼ながらもメールを送らせていただいた次第です。お伺いしたいことは、以下の点です。私の理解不足からくる質問になってしまうかもしれないのですが、ご容赦ください。もし先生にお時間ができましたら、返信くだされば幸いです。よろしくお願いします。


質問:(細かいことですみません。2点あります。)
1、p.157に「「メッセージ構築の層」(第3層)には言語化・非言語化レベルの二極(証明・物語)があてはまる」とあります。しかし、p.136の表6.6を見てみると、「言語化・非言語化レベルの二極」には、5~8(「明示的」~「語り的」)があり、「証明・物語」は「受け手」の行にあります。これはどういうことでしょうか?

2、p.156の図7.5についてです。先生は、二次元の紙面上に表すことを断った上で、三次元の図を描いておられます。この図は、三次元上で、同じ大きさの層が縦に重なり合っているのか、それとも、上にいくほど層が小さくなっていくピラミッド型なのか、もしくは逆ピラミッド型なのか、が判然としませんでした。図7.5から判断するに、自我層が一番小さく、世界層が一番大きいです。これを図7.4との関係で考えると、自我層が一番下、世界層が一番上ということになります。なので、先の3つのうち、逆ピラミッド型なのかな、と自分は考えました。この理解でよいのかどうか、というのをお聞きしたいです。
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広島大学教育学研究科
幸坂健太郎さん

はじめまして、関西大学の牧野です。『「議論」のデザイン』は研究者向けの本なので、修士1年生の幸坂さんが(解説なしで)一人で読んで理解するのは、やや難しいかもしれませんね。でも、とても丁寧に読み込んでくれている様子が伝わってきましたよ。どうもありがとう。

実は、学期はじめのこの時期はとても忙しくて、じっくり回答を書く時間的な余裕がありません。ヒントをお伝えします。考えてみてください。


まず、質問2へのヒントですが、p.318の図13.1をご覧ください。この図とp.135の「小宇宙」が合体して全体像が描けたことになります。その意味では、質問1の疑問点は、全体像に至るまでの部品を個々に理解しようとしていることによるのではないかな?と思いました。

それから、言葉の違いにも着目してください。p.157「メッセージ構築の層」(図7.7の第3層)は、【メッセージ構築】であるのに対して、p.136の表6.6は【メッセージの共同構築】です。この言葉の違いがご理解いただけたら疑問が晴れるのではないかと思います。「メッセージ構築とは送り手と受け手の間で意味が共有された時点で成立する」という考え方です。

ちなみに、私からも質問していいでしょうか。この本を読み始めたきっかけは何でしたか?

牧野由香里

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牧野先生

返信遅くなって申し訳ありません!お忙しい時期を考慮せずにメールしてしまったことをお詫びします。お忙しい中、ご丁寧な返信をくださりありがとうございます。

ヒントを拝受いたしました。また、(7章で躓きましたがそのまま読み進め、)『「議論」のデザイン』を読み終わりました。本の内容はまだまだ理解できていません…先生から頂いたヒントも、今熟考している最中です。ただ、この本は、私の研究、すなわち国語科における論理的思考力育成カリキュラムにとって、貴重な一冊になるのではないか、と自分なりに判断しました。もっと多くの文献と照応させつつ、消化していこうと思います。もし先生からのヒントで内容が読み解けたならば、また連絡させてください。恥ずかしくない回答を考えます。宜しくお願いいたします!

先生から頂いた質問に回答いたします。

河合塾の現代文講師でいらっしゃる成田秀夫先生に紹介していただきました。成田先生とは、広島大学で国語教育を研究しておられる難波博孝先生を通じて知り合いました。国語科では今、論証モデルとしては、往々にしてトゥルミンモデルが用いられています。成田先生から、「トゥルミンモデルについては牧野先生が論じていらっしゃる」ということを伺い、牧野先生の著書も、その際、同時に教えていただきました。成田先生が、牧野先生によろしく伝えてほしい、とおっしゃっていました。

広島大学・幸坂健太郎

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幸坂さん

お返事(ご回答)ありがとうございました。ご回答の「続き」も楽しみにしておりますので、またご連絡くださいね。

ホームページの【お便り】をご覧いただくと、この十年間の歩みをふりかえることができますが、国語教育に関していえば、十年前の時点ではまだ「コミュニケーション」が前面に出されていて、「論理的思考力」の存在感は薄かったように記憶しています。学校教育の現場では、十年間の試行錯誤を経て、この問題意識にたどりついた、ということなのかな?と感じました。いずれにせよ、学校教育(国語教育)の現場で私の提案が何らかの形でお役に立てるとしたら、そんなにうれしいことはありません。今後の展開を楽しみにしております。

ところで、成田秀夫先生がご紹介くださったというお話は意外でしたが、たいへん光栄です。私からも、ぜひ、よろしくお伝えください。

牧野由香里

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つづく



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広島大学教育学研究科・幸坂健太郎です。以前先生に送らせていただいた疑問点について、頂いたヒントをもとに考えてみました。自分なりの回答をお送りいたします。お忙しい時期とは存じますが、お時間の都合が宜しい時にまた返信くだされば幸いです。

まず、幸坂の質問1に、自身で回答します。

表6.6の「明示的~語り的」は、あくまでも言語化・非言語化されたメッセージそれ自体の性質である。そのメッセージが、「送り手」「受け手」という関係の中で捉えられるとき、その「明示的・弁証的」という性質は「受け手」にとっての「証明」となり、「暗示的・語り的」という性質は「受け手」にとっての「物語」となる。p.157の図7.6では、自我―世界間、すなわち自我と他者との関わりを捉えている。よって、表6.6における「明示的~語り的」という性質は、「証明」「物語」という語に置き換えて、図7.6に位置づけられるべきである。

次に、幸坂の質問2に、自身で回答します。

まず、p.135の図6.8をより詳しくしたものがp.318の図13.1であることを確認する。すなわち、この2つの図は、基本的には同じものを指している。そして、これらの図とp.156の図7.5も、(球とそうでないのとの違いはあれ)同じものを指していると考えられる。以上より、図7.5は、球である図6.8・図13.1と同じ図なのだから、球のような四角、すなわち立方体を二次元に書き表したものということになる。幸坂が質問で述べた3つの型のどれでもなく、立方体という理解が正しい。
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幸坂健太郎さん

こんにちは。だいぶ理解が深まりましたね。ここまで突き詰めて考えたらもう十分だろうと内心は思いますが(笑)、念のため、私のほうでも若干補足しますね。


<回答1>
おっしゃる通り「メッセージそれ自体」を表しているのが第3層です。ただ、「証明」「物語」という概念は、実は「メッセージそれ自体」という狭義に加えて、広義の意味では、この本で一貫して取り上げている「仮説的二極」を同時に表しています。つまり、ミクロの意味とマクロの意味とを併用して使い分けていることが、ややこしさの原因なのだろうと考えました。

マクロの意味で用いている「証明」「物語」は、言い換えれば、「実証主義」「経験主義」という概念を象徴するキーワードです。「小宇宙」(p.135)の球を貫く一本の軸の両端にある相対的な二極を表しています。ですから、端的にいえば、金太郎飴のようにどこを切っても「証明」「物語」なのです。

さらに、「メッセージの共同構築」(表6.6)では「送り手」と「受け手」という視点が加わりますが、ここで強調したいのは【納得】と【解釈】の対比です。すなわち、「受け手が【納得】することによって【証明】というメッセージの共同構築が成立し、受け手が【解釈】することによって【物語】というメッセージの共同構築が成立する」ということを表そうとしました。

(すいません。今、手元に本がないので、「納得」や「解釈」といった表記は多少ずれているかもしれませんが、考え方はそういうことです。)

<回答2>
はい、みな同じものを指しています。最終的な全体像は球なのですが、たとえば第15章になると、「自我-世界」の階層構造に加えて、4つの方角(体系・意味・価値・身体)や、4つの辺(対話のシステム、対話のルール・責任、共同体の絆、意味と価値の深化)を強調する必要が生じてきます。これらの概念は、円(球)ではどうしても表現しきれないので、正方形(立方体)で表すほうが便利です。

そういうわけで、そのとき一番強調したいことを一番表現しやすい形で描いた結果、正方形(立方体)と円(球)の併用という形になりました。けれども、それが読者のつまずきになるというのはご指摘を受けるまで気づきませんでした。正方形(立方体)と円(球)の併用について、どこかに明記しておくべきだったと反省しています。貴重なご意見をありがとうございました。

ちなみに、ホームページの【プロフィール】の中ではいただいた書評を掲載しています。ここに「国語教育の観点からの書評」という位置づけでリンクをはらせていただきますね。専門家からの書評だけでなく、幸坂さんのような立場の方からの書評もたいへん貴重です。改めて、どうもありがとう。

牧野由香里

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牧野先生

お忙しい中、かつ一大学院生のメールに対して、本当に丁寧に対応していただき、感謝しています。先生のおかげで、少しずつ先生の著書の内容・意義が理解できてきました。先生の著書には、論理的思考力がなぜ必要なのか、どのような文脈の中で求められるのか、ということに対する一つの答えがあります。それを国語科教育でどう生かしていくか、今後とも考えていかなくてはならないなと感じております。

先生のホームページを拝見いたしました。本当に私のメールを引用してくださっていて恐縮いたしました…。でも、とても嬉しかったです!ありがとうございます。

もしまた著書に関してお伺いしたいことがありましたら、連絡させていただくことがあるかもしれません…。申し訳ないのですが、その際にはまたよろしくお願いいたします。本当にありがとうございました。

幸坂健太郎

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by tomac | 2009-09-30 12:14 | 『「議論」のデザイン』
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