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コミュニケーション能力と学び(覚え書き)

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■対話デザイン2008 → 新しい試み(その5)

「コミュニケーションと能力」の授業は、年内は昨日が最後でした。この日はゼミの卒業生(ゼミ第1期生であり、対話デザインをゼロから一緒に創ってくれたメンバーの一人)をゲストスピーカーとして迎えていたのですが、そういうときに限ってハプニングって起こるものなんですよね…(笑)

この日は朝から濃霧によるJRの遅延が広域に発生したため、受講生の多くが授業開始時刻に間に合わない状況でした。

それにしても不思議な偶然だな~と思ってしまったのですが、実は先週、

レポートを書く権利は「対話の責任」を担うことによって得られる。

という「命題」について、

グループワークによる話し合いを経て、受講生それぞれに自分の考えをレポートに記述してもらったのですが、

その結果、なんと!4分の3の受講生が、この命題に対して「真」と判断したのです。つまり、あれだけの厳しい出欠管理をしているにもかかわらず、その正当性を認めてくれたということです。

ただし、「偽」と判断した受講生の主張にも一理ありました。

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9時に着席しているといっても、講義を全く聞いていなくても(=責任を担っていない)、レポートを出せば点数がもらえる。対話の責任とは、ゼミチームのフィードバックや講師の講義にきちんと耳を傾けることであるはずだが、レポートを書く権利は、9時にレポート用紙を受け取った時点で発生する。これはおかしい。
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というわけですね。なるほど、なるほど。

しかし、これをふまえてゼミチームの出した結論には、うならされました。

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5点満点のうち、レポート用紙に含まれる「命題」「抽象」「具体」という3つの項目に何か書いてさえあれば、3点は取れる仕組みになっていて、その後は論理性の精度に応じて、4点、5点と加算されるのだから、

●対話に参加する意思に対して、3点 ( 1点~3点は、9時に間に合い、着席した対話参加意思の点数)

●きちんと考えて、対話を返したことに対して、さらに、2点 ( 4点~5点は、対話を行ったことに対しての点数)

ということになる。
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なるほどー、その通りだね!

こういう価値ある判断が、受講生の側から、ゼミ生の側から、自発的に生まれたということがすごいなあ、と素直に感動しています。

この対話デザイン・プロジェクトは、私一人の力だけでなく、多くのスタッフの協力と、受講生の賛同によって成り立っているものなので、自分だけの成果などと言うつもりはさらさらありませんが、

これほど学生一人ひとりの倫理的な価値判断をゆさぶり、影響を与え、育てることのできる講義科目は、日本中の大学を探しても、そうないだろうと思います…。


さて、

この日の濃霧によるJRの遅延は、いつもの日常的な遅延とは明らかに異なり、台風や大雪に匹敵する非常事態です。さらに、事務からも正式に対応の要請がありましたので、

この出欠管理システムを導入して以来初めて、例外的に、授業開始時刻を遅らせました。

すでに到着していた多くの受講生たちには試験の説明をしながら待ってもらい、遅刻者に対しても、いつもより遅くまでレポート用紙を配りました。

というわけで、予定通りにならなかったこともいくつかありましたが、ゲストスピーカーはちゃんと役目を果たしてくれましたし、このプロジェクトにハプニングがつきものだということは、本人も経験者ですから、痛いほどよく知っています(笑)。社会人として送り出したあとも、こうしてまた新しい挑戦を共有できて、うれしかったです。

…と、本年度の対話デザイン2008は本当に実り豊かな学びが実現したのではないのかな~と感じています。

初年度(2004年)の試みについては、『「議論」のデザイン』の中でも触れていますが、

5年目を迎え、システムとしてもかなり洗練された方法論を、いま改めて形にしてみたいなあ、と思い始めている今日この頃です。
by tomac | 2008-12-11 18:11 | 牧野ゼミ(対話デザイン)
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