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コミュニケーション能力と学び(覚え書き)

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■対話デザイン→受講生のレポート(その4)

 対話デザインによる授業づくりを思いついたきっかけは、「公平な評価方法の模索」にありました。詳しくは「■大教室の講義授業(2003年10月30日)」に書いていますが、「大教室の講義で、がんばった人が、がんばったぶんだけ報われる評価とは、どのような評価方法なのか?」というテーマへの挑戦でした。

 実は今回、その答えがおぼろげながら見えたような気がしています。

 昨日の記事にてお話ししましたが、「水面下」の対話を「可視化」するために、コミュニケーション・ツールを活用する、というアイデアは、ゼミ生たちが自ら提案したものでした。このとき、私は思わず聞き返しました。

 「え?でも、負担が増えるよ。いいの?」

 ゼミ生からのレポートにもあるように(→05.01.11-12)、彼らは毎回の任務をこなすだけで、すでに膨大な作業量をかかえていました。これ以上の負荷は(アルバイト代などの報酬がない限り)難しいだろうと思っていたのです。が、意外にも、こんな応えが返ってきました。

 「いや、担当チームのフィードバックが15分間の一回きりで終わるより、掲示板を使って、各チームが提示した命題について、受講生と話し合いを続けられるほうが嬉しいです。」

 実は、同様の反応が、受講生からも寄せられています。

●初めて命題を聞いてレポートを書くときは本当に困った。何から書いていけばいいのか迷った。しかし、ゼミ生の方々が「まずどちらの立場か?理由は?例は?」と、その3つが書いてあればいいと教えて下さったので、最初のレポートはなんとか書けたという感じだった。回数を重ねるごとに、レポートを無理矢理書いているというのではなく、自分の意見を聞いてもらいたいというふうになっていた。この小レポートを12回書き続けて、自分の意見を誰かに伝えることが少しうまくなったと思った。

●学期前半の取り組みについては反省する点が多い。自分の考えを書くというよりは、5点を取るためのレポートを作っていたと思う。よく考えられるようになったのは学期の半ばくらいだった。ゼミ生たちの分析や考察が分かりやすくおもしろい。そう思うようになってからは自分も一員として参加できていたと思う。一番記憶に残っているのは、欠陥商品に対する企業倫理に関するレポートだった。A社、B社、C社の選択で、自分はC社を選んだが、今になって考えると、A社が絶対だと思える。

 もちろん、レポートの時間になってやってくる受講生は最後までいました。中には親切に友達のぶんまで書いていた受講生もいたようです。しかし、入室を禁じたり、用紙を限定して配るなどの管理的・権威的な介入は控えました。

 「したければ、すればいい。いちばん損をしているのは、自分だよ」というメッセージは送り続けましたが。

●私は最初、小レポートですべて満点をとれば(合計60点で)この授業に合格できると思い、がんばろうと思っていました。しかし、9時に間に合わず、10時に来る日が2、3回続いてしまったときに、やはり3点しか取れませんでした。なんでだろうとあきらめかけたとき、9時に来て先生の話やゼミ生の話を聞いて、いつもと同じように小レポートを書いたら、5点を取れるようになりました。ちゃんと9時に来て授業を聞くことで満点がとれると分かり、それからはがんばって来ています。

●全ての授業に出席し、小レポートを出したことは出したのだが、2回にもわたり不正行為をしてしまい、先生やゼミ生の皆さんに迷惑をかけてしまったことを後悔している。授業が1時間目だったこともあり、何度か遅刻してしまい、内容がわからないままレポートを書かなければならないことがあった。全くもって意味のないことだが、点欲しさに書いていた。反省。

 人によって、学び方もそれぞれということですね…。

 対話というは、決して強要できるものではありません。ただ、もしも、その喜びを実感することができたなら、それは「点数」よりもはるかに価値のある「対価」になるのではないでしょうか。

 ちょうど、今週の日曜日に企業の「成果主義」について高橋伸夫氏の談話が朝日新聞(広告欄)に掲載されていました(05.01.16)。これを読むと、「企業の評価」も「授業の評価」も同じなんだな~と気づかされます。

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 成果主義を導入している会社では、社員一人ひとりに点数をつけて評価する方法をとっています。だけど、人の能力は、点数で簡単に表せるものでしょうか。(中略)本来、仕事での評価って簡単なものなんです。最高の評価は「また、あなたと一緒に仕事がしたい」と、いわれること。ある人はそのひとことで、それまでの努力のすべてが報われ、人生観が変わっちゃうぐらい感激したといっています。認められる快感を若いときに味わった人は、それが自信につながって、後の仕事人生も大きく変わります。(中略)みんな多少給料は安くても好きな仕事をしたいんです。成果主義を唱えている人は、賃金は成果の対価になっていればいいなんていうけど、間違っていますよ。こんな成果主義じゃ、誰も幸せになれないと、僕は思いますね。
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by tomac | 2005-01-18 12:55 | 牧野ゼミ(対話デザイン)
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