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コミュニケーション能力と学び(覚え書き)

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◆心に響きました

◆心に響きました_b0046050_124890.jpg連休中に読んだ中で印象に残った一冊です。研究のプロセスをストーリー調に語っている面白さだけでなく、著者の誠実さが伝わってきます。

この本の中で示唆に富む一節を読んだとき私はある学生を思い出しました。「コミュニケーション能力とは?」という問いに対して切実な思いを綴ってくれた学生です。

 「人間のコミュニケーションは複雑になりすぎた。シンプルな信号だけで意思疎通ができる動物たちがうらやましい。」

 テストの解答用紙を採点中だったのですが、なんだか力が抜けて、思わず微笑んでしまいました。そのときの私にできたことは、下線を引いて花丸をつけることぐらいでしたが。

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 しかしながら、自閉症について理解することは、自閉症児の療育や支援に役立つという側面だけでなく、自閉症ではない人間、定型発達者を理解する「鏡」を得ることにもつながります。例えば、自閉症者のコミュニティで知られている話として、自閉症者でない人々は「定型発達症候群」という障害を持っている、というものがあります。
 定型発達症候群とは、以下のような症状を持つ発達障害です。「他人の気持ちにこだわり、読心術ができているかのような妄想を持つ」「正直でことばの意味通りのコミュニケーションを行うことができず、ことばの意味とその会話で伝えようとする意図が矛盾してしまう」「道順やものの位置など、環境の変化に気付くことができない」「社会的な立場や友人関係、他人からの評価など、限られた範囲の内容にしか興味を持つことができない」。何か思い当たることはありませんか?
 自閉症を持たない我々の多くである「定型発達者」が当然のこととして考えている社会行動は、よくよく考えてみると、合理的な説明ができるものばかりではありません。また、全てが役に立つわけではなく、悩みの種になったり、仕事に支障をきたしたり、法を犯してしまう原因になってしまうこともあったりします。このような社会行動の特徴は、「自閉症」という視点から見たらとても奇妙で、不思議なものに見えてきます。
 定型発達症候群の“症状”である対人行動やコミュニケーションの特徴は、社会脳の特徴でもあります。自閉症者という「鏡」を通してこれらの行動を眺めてみることにより、定型発達者の社会脳がどのような役割を果たしているのか、どのような処理を行っているのかについて、新たな視点から研究を行うことが可能です。自閉症者は、社会脳について、人間社会について新たな見方を教えてくれる「先生」でもあるのです。
-----千住淳『社会脳とは何か』(2013, 96~97ページ)-----


 
by tomac | 2014-05-10 12:20 | 日々の出来事
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