人気ブログランキング |

コミュニケーション能力と学び(覚え書き)

tomag.exblog.jp ブログトップ

■対話デザイン2007 → 受講生のふりかえり(5)

対話デザイン2007の一つの成果は「レポートを書く権利」という概念が、受講生の側から提案され、それに対して、「レポートを書く権利を保障するシステムを授業に導入できた、という点だったのではないかと私自身はふりかえっています。

この「レポートを書く権利」ということばを提案してくれた○○さんは、秋学期の学びを次のようにふりかえりました。

-----
●私はこの12回の授業において無遅刻・無欠席で授業に取り組むことができました。この授業はとても抽象的で考えること無しでは理解することができません。とても難しい内容だったので、先生からのヒントやゼミ生からのフィードバックを通して自分の考えを持つことができたと思います。授業をきちんと聞いて「考える」ことが多かったため、思考する力が身についたと思います。また、セクション1、2、3と断片的なものを総合して考えるのはおもしろく、これがこれにつながっている!!と分かったときは嬉しかったです。コミュニケーションは私たちにとって必要不可欠でとても身近なものなので、授業の内容を自分の経験と照らし合わせることもできました。総合的に私はこの授業に積極的に取り組めました。
-----

○○さんのような人は、いわゆる優等生であるの同時に、きっと私と価値観が似ているんでしょうね。だからこそ、こんなにも共鳴してくれるのだと思います。

しかし、受講生の価値観は多様ですから、同じことをしても同じ評価が得られるわけではありません。とくに私の授業デザインは、抽象的な概念を断片的に提示し、学び手自身がそのパズルのピースをつなげられるように、できる限りの支援をする、というスタイルなので、一般的な講義を受けているときと同じような受動的な取り組みでは、よくわからないまま終わってしまうケースもあると思います。

それは試験の答案を読んでみると、手に取るようにわかりますね。「よくぞここまで理解を深め、自分の言葉で記述できたね!」と本人に伝えたくなるような素晴らしい答案もありますが、大多数の受講生からは、輪郭はおぼろげながらに描けたけれど、それを的確に表現する術を持たない、という印象を受けます。

問題が難しいことは承知しているので、おぼろげながらも輪郭が描ければ、出題者としては、それで十分だと思っています。平常点(レポート点やボーナス点)の貯金があれば「優」がとれるはずですから。

なお、「評価」という観点でいうならば、試験の点数や成績はもちろん大事ですが、学び手の満足感や達成感はそれ以上に重要だと考えています。だからこそ、次のように自らの学びをふりかえられる受講生が一人でも増えてほしいというのが願いです。

-----
●この講義内容を全て把握しきれているわけではない。しかし、対話、コミュニケーションという人間の普通の能力を“特別な能力”として見られるようになった。ただ二者間の対話だけがコミュニケーションではなく、講義のような一対多数、インターネットを利用した一対不特定多数もコミュニケーションだと改めて理解した。これらが当たり前で、一般的で、日常だと思っていたからである。無言でも相手に何かを伝えたい時、見えない相手に想いを伝えたい時、日常の会話の時も、この講義をふと思い出すことがあるので、少なくともこの講義が身についているのだと思う。

●この授業で学べることが100あるとすると、私はその内の40程度までしか学べなかったように思う。その原因としては、まずこのコミュニケーション論という学問に取り組むために、どういったスタンスで入ればいいかをなかなか掴むことができなかった。最初にこの授業を受けたときに「なんて曖昧な学問だ」と感じ、それからなかなかその思いを拭うことができなかった。しかし、この授業の中ごろあたりから、なんとなくではあるが、こういった本来言語化することが非常に難しいことがらを言語化するというスタイルに少しずつ慣れてきたように思う。そしてそう思えるということだけで、この授業を受けた意味は十分にあったと感じる。貴重な経験、本当にありがとうございました。

●私は、とりあえず全授業にちゃんと出席した。でも、とりあえず、である。授業中別におしゃべりしていたわけでもないし、前をみていたつもりだったが、いざ命題が提示されて、書こうと思うと、まったく授業の内容を理解していない、というより、考えていなかったことが多かった。特に後半の授業では、え? どういう意味? という命題が多く、自分でも書いているうちに何を書いているかわからなくなり、案の定マイナスの点数が多かった。ただ、少なかったが、理解できた時は頭の上に電球が光ったように、突然先生が言っていることが一本の線につながって、とても授業がおもしろいと感じた。そこで私は授業にでる時は、ただまじめにうけるだけではなく、理解しようと常に頭で考えていることが大切だと思った。ありがとうございました。

●この授業は、日常の生活の中で全く意識することのなかった事柄について詳しく考え、言葉一つ一つがとても意味のあることであり、様々な仕組みで“対話の責任”というものがあるのかなど、今まで考えたことのなかった項目についてたくさん学ぶことができました。また、この授業の最後で毎回レポートとして「命題」「根拠」「事実・データ」を考えることはとても難しいことでした。“物語”“証明”など一つ一つの言葉の意味は理解できても、その背景にあるものとのつながりを考えるとなると、いつもどういうことなのか深く考えてしまい、なかなか書き出すことができませんでした。でも、友達と話し合ったりすることによって少し理解できたりして、楽しいと感じたこともありました。私は、[この授業]はとても深いことが多く、理解するのは難しいけれど、興味を持ち取り組めば、いろんな発見が出来、楽しめるのではないかと思いました。

-----

一方、こういう学びのスタイルに慣れることができないまま不満だけを残して終わる、という不幸なケースも中にはあります。受講生にとっては「講師との相性」という要因も大きいと思うので、履修登録の前にこういう生の声を届けることができたらなあ、と思ったりします。この授業スタイルをあらかじめ知ったうえで選択することができれば、授業と直接関係のないことに体力を消耗せずにすむと思うので…(笑)

それから、もう一つの改善案として、教科書とはいわないまでも、副読本のような教材があれば、その場で理解できなくても、予習・復習ができるので、助けになるはずなのですが、現状では教科書は使用せず、毎回配布する資料のみという形で進めているので、この問題を何とか解決したい、というのはこれまでもずっと考えてきたことです。

ちょうど来年度から「コミュニケーションと能力」という科目名に名称が変更されるので、これを機会にそういう教材開発に挑戦してみたいです。そのときは、今回の「対話デザイン2007」シリーズを付録として載せてみようか? などと真剣にもくろんでいます(笑)。

by tomac | 2008-01-28 16:25 | 牧野ゼミ(対話デザイン)
line

このブログのトップページは www.tomac.jp です。


by tomac
line
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31