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コミュニケーション能力と学び(覚え書き)

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■物語という対話

 関西大学では、11月のはじめに学園祭がありましたが、その少し前に、
演劇部の学生が研究室にやってきました。

 話をきいてみると、なんでも学園祭で上演する予定の劇というのが、
倫理的価値判断をテーマにしているらしく、たとえばイラク戦争に対する
キリスト者としての私の考えをインタビューしたい、ということでした(!)。

 へえ、こんなこともあるんだなあ~、と内心かなり驚きましたが(笑)、

「私なんて、異端中の異端だから、あんまり参考にならないと思うよ~」

という点を強調したうえで(笑)、とりあえず、自分の考え方については、
きちんと伝えました。

 その後どうしてそういう展開になったのか、はっきり覚えてないのですが、
彼らの作った脚本を見てほしい、ということになったのです。

 ひょっとすると、彼は私の担当した授業で、「語りスピーチ」の演習を
体験したことがある学生なので、そのせいだったのかもしれませんが…?

 とにかく、脚本を読ませてもらうと、「ドラえもん」という切り口から、
タイムマシンにのって第二次大戦中にタイムスリップし、「日本軍による
中国人への虐待」を扱うという、かなり重たい内容でした。

 ドラえもんの軽さとテーマの重さとのギャップも工夫されていましたし、
過去の歴史に率直に向き合おうとする清々しさにも好感を覚えました。

 けれども、「対話が大切だよね!」といって閉じるエンディングが、
なんとも、きれいごとで片付けられているようで、残念な気がするなあ、
というコメントを返しました。

 彼自身も何かが足りないと思っていたそうで、「書きなおしてみます」
といって去っていきました。

 あれからバタバタと忙しかったので、そのことはすっかり記憶のすみに
追いやられていたのですが、

 さきほど、その彼が、お願いしておいた劇の撮影ビデオをもって、
研究室を再び訪ねてくれました。

 さっそく見せてもらうと、エンディングの部分が大幅に変更されていて、
過去の過ちを糾弾するだけでなく、自分たちの中にもある醜さや弱さに
きちんと向き合い、そういう自分でもできる小さなことから始めていこう、
というエンディングに仕上がっていました。

 実は、物語の倫理というのは、私にとっても重要なテーマの一つで、
コミュニケーション論Ⅰの最後の授業でも取り上げる予定でいますが、
授業内容とぴったり一致するので、なんとか教材化できないだろうか、
ということで、彼の協力を求めたところ、快く引き受けてくれました。

 道徳的な演劇というと、教訓めいた美談で終わるものが多いのですが、
そういう類は好意的に反応する観客がいる一方で、演じ手と観客の間に
冷ややかな距離を生み出すことが少なくありません。

 それに対して、演じ手と観客とがお互いにお互いの弱さを認め合って、
ゆるしあう、というプロセスを共有できたときはじめて、相手の価値観に
影響を与えるような強いメッセージが生まれると、私は考えています。

 つまり、物語も「対話」なんですね。

 それを学術的にきちんと論じることが、仕事の一つだと考えています。
by tomac | 2004-11-12 20:14 | コミュニケーション能力って
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