コミュニケーション能力と学び(覚え書き)

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■今さらですが、自己紹介など

ゼミのメンバーたちと雑談しているときに、「そもそも、なぜこういうことをしようと思われたんですか?」とたずねられて、「そういえば、この話を誰かにするのは久しぶりだなあ」と思いつつ、語り始めました。

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私がみんなと同じ大学生の頃は、なんていうか… コンプレックスのかたまりだったんだよね。自分の考えを言葉にする、ということは小さいときから自然にできたけど、それで褒められるということはなくて、逆に、相手を追いつめてしまうことのほうが多かった。

それでも大学生になると、ディスカッションの機会が増えて、そういう場面では、じっと黙っている人たちを見ては「なぜ何も言わないんだろう?」と冷ややかに見つめる自分もいたりして。だから、劣等感と優越感が共存しているような、そんなアンバランスな青年期を送っていたわけ(笑)。

あるとき、友だちがこんなことを聞かせてくれてね。

「そりゃあ、意見は言いたいよ。でも、自分の考えを整理しているうちに次の話題にどんどん進んでしまって、結局いつも、何も言い出せないまま終わってしまうんだよね。」

「えぇっ! そうだったの?」って、もう目からウロコが落ちるどころの騒ぎじゃなくてさ(笑)。ものの見方が180度変わった。

私は教育学部だったから、当時はいわゆる教授法のような科目をたくさんとっていたんだけど、小学校体育の教科教育法で、すばらしい先生の授業を体験してね。最初の授業で、その先生がこうおっしゃったの。

「ぼくは体操の選手でしたから、小さいときから、鉄棒も跳び箱も、運動は何でも自然にできました。けれども…」

と、目の前に敷かれたマットの上にいきなり寝転がって、こう両腕を頭の上に伸ばして、マットの端から端までコロコロと転がって、そして起き上がって、こう言ったの。

「世の中には、こういう動作さえも、むずかしいと感じる子どもたちがいるのです。」

この先生の授業では、主に「さかあがりの補助法」を学んだんだけど、クラスの中に一度もできたことのない子がいてね。私たちはこう背中を合わせて下から押し上げるんだけど、そうやって補助の仕方を学ぶうちに、できるようになったんだよ、その子が。一度もさかあがりができなかった子が、大学生になって、初めて!

本人はもちろんうれしかったと思うけど、補助をした私たちも、すごくうれしかった。

この体験と、さっきの友だちの話が、ガチッとリンクしてね。

「ああ、これが自分の生きる道だ!」

って思ったんだよね(笑)。
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最初にそれを話すべきですよー! その人の人間性に触れて初めて、もっと知りたい!と思うものじゃないですか。」と言われて、なるほど、その通りだな、と納得してしまいました。

物語のメッセージがいかに効果的であるかという話なら、そのメカニズムを専門的に解説することもできるけれど(いつも講義しているけれど)、自分自身の内面的な、本質的な部分を、とくに初対面の人にいきなり話すのは、なかなか簡単なことではないですよね。でも、それで壁を取り払うことができるのであれば、躊躇している場合ではありません。これからは…

初対面の人にこそ、積極的にこの話をしよう!

と思い直しました。

その後の道のりについては「歩み」のページでくわしく語っています。(■こちらからどうぞ■
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by tomac | 2008-07-31 16:02 | 自己紹介です

■苦い薬の効能とは

凹んだ私を心配してか、市民のための議論ワークショップの参加者の方々から、温かい励ましのメールをいただきました。みなさんのメッセージを集約すると、こんな感じになるでしょうか。

十字モデルの価値は、みんな心から認めています。ただ、真に有効な手法とするには、踏まなければならないステップがまだある。自信をもって研究を続けて。十字モデルは、たしかに難しいけれど、慣れれば使えるようになると思います。


みなさんのお気持ちに何とかお応えしようと、私なりに考えたすえ、

「私自身のふりかえりです(牧野)」

と題して、改めて一人ひとりの方々に、次のようなメールをお送りしました。


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こんにちは、牧野です。

今回の議論ワークショップについて、
私自身のふりかえりをまとめてみました。
よろしければ、
ご一読いただけたらうれしく思います。

今回の議論ワークショップは、
学会からお話をいただいたことがきっかけでした。
お世話になった方々のご提案でお断りできず、
お引き受けしたものの、何もかもが初めての体験で、
思えば、よくわからないままの状態で
当日を迎えてしまいました。

ですが、幸いなことに、
今回の貴重な経験を通してようやく、
おぼろげながらにも、
自分が挑戦しようとしているものの輪郭を
描くことができました。

もし、もう一度チャンスが与えられるならば、
今度は最初に、次のようにお伝えしたい、
と思っております。

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一般的な議論では、一部の「頭の回転の速い人」(考えを即座に言語化できる人)が主導権を握りがちです。けれども、このタイプの人たちの意見のほうが、そうでない人たちの意見よりも価値があるとは限りません。ではどうすれば、すべての参加者が対等に意思決定のプロセス(議論)に参与できるのか。この問題意識が、今回の「十字モデルによるファシリテーション」という発想の出発点でした。

「十字モデルによるファシリテーション」はたしかに、もともと議論ができる人にとっては自由を奪う縛りにしかなりませんが、その代わり、議論が苦手な人にも発言の機会が平等に保障されますし、また、誰がどの部分に貢献したのかが一目でわかります。

もちろん、同じことは人の手によってもできるでしょう。議論の好きな人には「ちょっと待ってください」と言い、苦手な人には「あなたはいかがですか」と問いかけることは、通常、ファシリテーターの役割です。しかし、その場合、参加者とファシリテーターの間に「力関係」が生じてしまう可能性があります。たとえば、今回のワークショップにおいて、ファシリテーターである私が、まるで「権威者」であるかのように議論をコントロールしたように。

「十字モデルによるファシリテーション」では、この種の介入は参加者の手にゆだねる、という考え方をします。

それゆえ、まず参加者が十字モデルをある程度理解して、共有できるようになってからでないと使えない、という欠点もあります。

実際、十字モデルの学びには時間がかかります。それはちょうど外国語学習と似ています。工夫しだいで苦痛を和らげることはできても、即効性のある飲みやすい薬にはなりません。むしろ、飲み続けることで体質改善が期待される漢方薬に近いです。

では、この「苦い薬」の効能とはいったい何でしょうか。

それは、意思決定の精度(より多くの参加者の意見が対等に反映された価値判断であること)を高めるということです。

しかしながら、「十字モデルによるファシリテーション」は、いわば開発したての「新薬」です。実用の効果を検証しながら、改良を重ねていかなければなりません。

そのため、ワークショップの様子の記録をとらせていただくことをご了承ください。主に音声の録音が中心ですが、映像を撮影するときはその都度あらかじめお知らせいたします。

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以上の文章は、
今回の議論ワークショップを体験する前には
書くことはできませんでした。
しかし、失敗を通して気づいたことをまとめたら、
このような文章になりました。

これが私にとっての学びの成果です。

貴重な学びを本当にどうもありがとうございました。

またお目にかかれる機会があることを願っております。

牧野由香里

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by tomac | 2008-07-28 20:12 | やわらかい議論ワークショップ

■凹みました

市民のための議論ワークショップは… 大失敗というより他に、ことばが浮かびません。

恥ずかしながら、すべては失敗してみて初めて気づいたことなのですが、今ようやく、こういうことだったのかな、とふりかえっています。

自分がやろうとしていたのは、たとえるなら、新聞の広告欄に載っているような

「新薬の効果を検証します。被験者になってください」

という試みでした。

しかし、私自身にはそういう自覚はまったくありませんでしたし、大学という学術コミュニティをひとたび離れたら、普段何気なくしていること、当たり前に思っていることは通用しないという認識も欠落していました。そのため、取り返しのつかない不手際を安易に見過ごしてしまい、結果的に、参加者の方々はもちろん、スタッフにまで、不快な思いをさせてしまいました。弁明のしようがない、大失敗の一つです。

にもかかわらず、みなさんのお力に助けられて、何とか予定していたプログラムを最後まで終えることはできました。けれども、「被験者」の方々の最終的な評価は、

「こんなに苦い薬を飲まなくても、いい薬なら他にもある。」

というものだったのではないかと、真摯に受け止めています。

具体的な例をあげたらきりがないのですが、この失敗を次につなげるためにできることは、「どうすれば薬の苦さを軽減できるのか」、「どんな症状に効果があるのか」について、丁寧に検証を重ねて厳密に見極めていかなければいけないということです。

思えば、参加してくださった方のほとんどは、そもそも「患者」ではありませんでしたし、「」を必要としていたわけではなかったのです。でも、だからこそ、

冷静な目で、的確に問題点をご指摘いただけました。

少なくとも私にとっては、挑戦した意義は十分にありました。

●議論の十字モデルという概念は、初めて目にする人にとっては、苦痛を伴うほど難しい概念だということをつい忘れがちですが、それはきっと私が、難解な数学の方程式を見たときの感覚に似ているのかな。そりゃあ、苦痛です(笑)

●このモデルを使った議論は、ごく一般的な議論とは異なる特殊な状況に適しているということもつい忘れがちですが、そういえば、あれだけ病院嫌いだった私が、自分が苦しいときは、わらにもすがる思いで治療に救いを求めたよな。本人が求めていないのに、「苦い薬」を押し付けても、効果なんて得られるはずがありませんよね(涙)

というわけで、辛い体験ではありましたが、避けて通れないステップだったことは間違いありません。たまには痛い思いをしないと、成長できませんものね…

ちなみに、以下は補足です。

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・新薬のたとえは、記録係を引き受けてくださった黒葛先生のアイデアです。

・ゼミチームが前日の夜11時過ぎまで頑張って仕上げてくれた教材は本当によくできていますが、私のプログラムの練り方が不十分で、教材を十分に活かせませんでした。

・一人だけ、「患者」と呼べる参加者がいらして、この方の評価には違う印象を受けました。

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by tomac | 2008-07-27 07:16 | やわらかい議論ワークショップ

■明日はいよいよ議論ワークショップです

あと少しで準備が完了します。紆余曲折ありましたが、いろんな方が協力してくださったおかげで、ああ、いいものができそうだなー、という予感がします。もちろん、まだ始まってもいないのですから、気を抜いてはいられませが、当日はリラックスして、楽しい一日になればいいなと思っています。

支えてくださった方々、ありがとう (^_^)

関係者のみなさん、よろしくお願いします!


くわしくは、後日改めてご報告しますね~

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by tomac | 2008-07-25 19:55 | やわらかい議論ワークショップ

■お米ブランドと十字教材

ゼミ活動の一環として、議論の十字モデルの教材開発に挑戦するというお話をしましたが(●関連記事はこちら●)、まずは、4つのチームのうち、最も完成度の高い作品を仕上げたチームが、バージョンアップに取り組んでくれることになりました。

まだ試験期間中ということで、スケジュールについてはメンバーたちともよく相談したのですが、今週中には完成できそうだという連絡を先程うけたので、週末(7/26)の●議論ワークショップ●にて、正式にご披露できそうですよ♪

b0046050_18391166.gif魚沼産コシヒカリ丹波産こしひかりが題材のお話ですが、なかなかよくできたストーリーです。映像を楽しみながら十字モデルの理解を深められる教材になっていて、公開の準備が整い次第、このホームページでもご紹介したいと思っていますが、まずは…


はたして、議論の十字モデルに初めて触れる一般市民の方々の目にどう映るのか?

が問われますよね。

ゼミチームのみんな、がんばってね!

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by tomac | 2008-07-22 18:56 | 牧野ゼミ(表現活動)

■暑いから

物語調の文章を書くのが楽しいのは本当ですが、だからといって、論文を書くのが嫌いなわけではなく、むしろ好きなほうだと思います。ただ、この十年間は明けても暮れても論文三昧だったので、残りの人生は(というと大げさだけど)違うことに目を向けたいなあ、と感じるようになりました。

博士論文が本になって(って、まだ本になっていないけれど)、晴れて世に送り出すことができたら、それは間違いなく一つの大きな節目になるし、いま最後の仕上げにとりくんでいる英文論文は(あいかわらず遅々たる歩みだけど)、結果はどうあれ、世界に向けたチャレンジの一つになればいいとは思っていますが、

学術的な権威性をとことん追求していったとしても、きっとその先で、何かが足りない、と感じるのではないかな。

今までは自分の限界に挑むような姿勢でムキさんになってきたところがあるけれど、これからは自己満足で終わらずに、広く多くの人に届けるためにはどうしたらいいのかを考えていきたいな、と思うようになりました。

暑いから、弱気になっているだけかもしれないけど、ね(笑)

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by tomac | 2008-07-19 16:33 | プロジェクトいろいろ

■学校現場の物語

ブログでは、まだ多くを語っていませんが、学校教育の現場は、大学教育市民教育と並んで、大切なフィールドの一つです。どんな教育実践の研究もそうですが、即効的な成果を期待せずに、長い目でのんびり待ちながらゆっくり進まないと、研究成果と呼べるものにはそう簡単に届きません。

種をまいて、芽が出たら、せっせと水をあげて、丁寧に育てても、実をつけないこともあれば、実をつけることもあるのです。

地元の中学校で、2004年12月に植えられた学校改革の種が、2005年4月芽を出して3年半の月日を経て、今まさに花が咲こうとしています。この先必ず、豊かな実りが待っていると実感できるまでになりました。

学校現場の先生たちの地道な取り組みをじっと見守り続けてきた私としては、これまで丁寧に積み重ねてきた膨大な量の記録がようやく形になり始めたことに、研究者としての喜びをかみしめています…(うる)

学校を扱ったテレビ番組は多いけれど、実際の現場には、フィクションでは味わうことのできない本物のドラマが、そりゃあもう、たくさん詰まっています。それをできるだけリアルに表現するのが自分の役目なのかな、と思っているので、今後は物語調の文章を書く機会が増えそうです。というより、そう選択していくつもりです。

論文を書くよりずっと楽しいので、うれしい。

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by tomac | 2008-07-16 15:44 | プロジェクトいろいろ

■扇風機と赤ワイン

b0046050_18233424.jpgb0046050_18243620.jpg記事を書き終えたところで、すべて消えてしまいました。そこで、2枚の写真を使ってストーリーを考えてみてください。ただし、扇風機のコードは電源につながっていないという点と、赤ワインの値段は525円という点がポイントです。
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by tomac | 2008-07-13 18:29 | 日々の出来事

■ゼミも、がんばってます!(議論の十字モデルの教材開発)

この春学期は、ゼミの新メンバーと一緒に長年の課題にチャレンジしました。これまでずっと先延ばしにしていた宿題として、議論の十字モデルをわかりやすく説明する教材を開発する、という願いがありました。(●関連記事はこちら●

まずは、ゼミ生たち自身がこのモデルの理解を深められるように、学期の前半はじっくり時間をかけて丁寧に授業を進めました。そのため、後半の制作では、例年ほど時間を取れませんでした。結局、最後の発表に向けては、

「作品そのものは不完全でいいから、チームとして、悩んで試行錯誤して、このモデルの理解を深めたんだな、ということが私にわかるような成果を見せて」

という指示を出すに至りました。

昨日、4つのチームがそれぞれ作品を披露してくれました。かなり完成度の高いものもあれば、技術的なトラブルのため未完成のものもありましたが、いずれのチームも、このモデルに込められた思想を、あるコンセプトを定めたうえで、マルチメディア作品として、わかりやすく表現しようとしたことがよく伝わってきました。

いつもいつも思わされることですが、

学生の潜在能力って、すごいです。

これだけの部品がそろえば、体系化された本格的な教材の開発につなげることができるはずなので、ただいま、その可能性を模索中です。

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by tomac | 2008-07-09 14:25 | 牧野ゼミ(表現活動)

■ゆかり煎餅と、本の話

b0046050_1651995.gif名古屋名物「ゆかり煎餅」をご存知ですか? きしめんういろうは有名ですが、このエビせん、スナック菓子とは一味違う本格派で美味しいんですよ。静岡に住んでいた頃よくお土産にいただきましたが、この週末、日本コミュニケーション学会の発表のため名古屋に行ったので、久しぶりに買ってみました。

学会では「演劇と教育」というテーマのセッションで、私の前に発表された二人の先生方は、発表そのものにもドラマの要素を取り入れていて興味深かったです。それに比べて私の発表はかなり抽象的な内容で、ついこんな言い訳をしてしまいました。

「理論研究なので、お二人の先生のように楽しい発表にはできませんが、できるかぎり、わかりやすい説明を心がけますので、よろしくお願いします。」

それでも、発表を終えてみると、会場の反応は予想以上に好評でした。「ああ、そうか。理論研究でも、こういうふうに説明すれば、ちゃんと伝わるものなんだな」と逆に自信がもてました。

実は今回の発表は、例の本ダイジェスト版みたいな内容だったのですが、あの発表に対して、こういう好意的な評価をいただけるのであれば、

本に込めたメッセージも十分読者に届くはず

という手ごたえを感じました。それが何よりの収穫でした。ただ、肝心の本は、まだできあがっておらず、予約してくださった方、申し訳ありませんが、もうしばらくお時間をください… (;_;)

本づくりというのはいろんな人が関わるプロセスで、なかなか自分の思うようには進みませんが、それぞれの人がそれぞれの立場で納得できることを優先させてきたのですから、晴れて本を手にするときが最高のタイミングなのだろう、と思いつつ、ひたすら待ち続けています。本当に、あともう一歩です。

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by tomac | 2008-07-07 17:06 | 『「議論」のデザイン』
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