コミュニケーション能力と学び(覚え書き)

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◆卒業制作という道を切り開く

牧野ゼミの卒業研究は「ショート論文」と「マルチメディア作品」の二本立てというスタイルが定着してきましたが(事例はこちらに)、

メンバーの人数が年々増えて、来年は14人、その翌年は16+1人になります。卒業研究の指導は分野によって異なるので、他のゼミのことはわかりませんが、少なくとも、私が一人で指導することを前提にすると(院生がいればまた違うのでしょうが)、ショート論文とはいえ、全員に研究論文の指導をするのは体力的な限界を感じるようになりました。

そんな中、今回の卒業生(第4期生)は、「卒業制作」という新しい道を切り開いてくれました。思えば、本格的に映像表現に取り組んだのは第4期生からのことで、その意味では、「卒業研究」ではなく「卒業制作」を選ぶメンバーが出てきたことは自然ななりゆきだったかもしれません。

彼は、「自分は論文には向いていないし、映像制作会社への就職も決まっているので、映画をつくりたい」という希望を最初から訴えていました。けれども、私はなかなか「うん」と言えず、「本当にできるの? たった一人で? じゃあ、これなら大丈夫って思わせてよ」と言い続けました。結局、夏休み明けの進捗報告を聞いた時点で、「わかった。できるところまで、やってごらん」と初めてGOサインを出したのです。

「私には映像制作の専門的な指導はできないよ」と突き放しつつも、ゼミのテーマである「表現活動」の一つと考えれば、このゼミなりのスタイルがきっとあると思いました。最終的に全編の完成には届かず、彼が発表会で披露したのは2分間の【予告編】です。



本人は十分に納得いかなかったようですね(自己評価PDFはこちら)。

ただ、ゼミの担任から見れば、前例のない中で、「映画をつくる」ということのすべてをたった一人でこなし(といっても、もちろん、そのために何人もの関係者とコミュニケーションをとらなければならなかったはずで、それが彼にとっては研究よりも価値ある経験になるはずだ、と私は判断しました)、卒業研究に取り組んだ他のメンバーたちと比較しても、決して劣ることのない成果を形にすることができました。

こうして、新たな道が開拓されたので、今後は研究に向いていない学生に論文を強要する必要がなくなります。メンバーがそれぞれ自由に、独創的に、表現の可能性を追求できる環境がまた一つ整いました。
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by tomac | 2009-03-26 14:24 | 牧野ゼミ(卒業研究)

◆卒業おめでとう

b0046050_1217871.gif牧野ゼミ第4期生を無事送り出すことができました。

「卒業するからといって、これで終わりじゃないですよ。少なくともメーリングリストにつながっている限り、いつでも連絡は取れるんだから。むしろ、社会人としての経験を積んでから、またゼミ活動に協力してください。私の厳しい指導によく耐えましたね(笑)。それを誇りに思ってください。」

あらかじめ考えておいたわけではないけれど、そんな贈る言葉となりました。50近くのゼミがあるのですから、厳しい指導をされる先生なら、他にもたくさんいらっしゃるはずです。厳しくても、信じてついていける信頼関係があるならそれでいい、と思っています。そういう関係はすべての学生と築けるわけではありませんが、彼ら彼女らとは、見えない何かを共有できたような気がします。
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by tomac | 2009-03-23 12:38 | 牧野ゼミ(卒業研究)

◆人生の折り返し地点

b0046050_14525771.gif仕事だけが人生ではないけれど、職業人生というものがあるとしたら、たぶん今が折り返し地点だろうなと思っています。『「議論」のデザイン』(ひつじ書房)を出版できたことは、植物の人生にたとえると、ようやく一つ、花が開いたあたりでしょうか。このあと、綿毛をつけた種たちが旅立つわけですが、はたして風にふかれたその先でどこにたどりつくのかはわかりません。自分にできるのは、一つひとつを丁寧にこしらえて、ふわふわの綿毛で包むことでしょう。

とりあえず、裁判員制度とか、教員免許更新制とか、まもなく始まる新しい制度にはもちろん賛否両論あると思いますが、私にとってはまちがいなく追い風になるはずです。

ただし、人生は何が起きるかわかりませんから、健康管理は怠らないようにしないと…。最初に自覚症状が現れたのはちょうど3年前になりますが、さきほど主治医と電話で話して検査の結果を確認したところ、治療のほうもようやく一つ区切りがつきました。
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by tomac | 2009-03-16 15:00 | 『「議論」のデザイン』

◆心の中に生きる人

『「議論」のデザイン』(ひつじ書房)は、米国の大学院に留学中のエピソードから始まり、その後さまざまな文脈で出逢った人たちとの学びあいの記録をあちこちに盛り込んでいますが、実際には、本の中には登場しない人(つまり、研究とは直接関係のない人)もいて、その人たちはひっそりと、私の心の中で生きつづけます。

米国の大学院に留学しようと思えば資金が必要ですから、大学を卒業して3年3ヶ月システムエンジニア(SE)として働きました。このときの経験が今になって活かされるなんて、そのときは想像できなかったです。それから、幸運にもロータリー財団の奨学金をいただき、金銭的に助かったのはもちろんですが、現地のロータリー活動に参加させていただけたのも貴重な財産になりました。

毎年毎年たくさんの留学生が世界中にあふれているわけですから、ホストといっても名前だけの形式というケースは珍しくないはずですが、自分はとっても恵まれてたんだなあとふりかえるのは、私を迎えてくださったホストロータリアンが心の底から尊敬する人格者だったことです。いつも丁寧に温かく導いてくださいました。

その方は市長(というよりはやや小規模の自治体かな)をされていたので、たかが留学生の私なんかのためによく時間を割いてくださったものだなあ、と思い返していますが、月一回のペースで、地域の各ロータリークラブの定例会に連れて行ってくださり、そこでスピーチをする機会をつくってくださいました。その経験からパブリックスピーキングの実践について本当に多くを学びました。

そして、会場までの往復のドライブで、私は夢を語り、その方は米国の建国理念についてわかりやすく話して聞かせてくださいました。オバマ大統領が歴史的な勝利演説をしたときは、自然とその方のことが思い出されました。

当時熱く語っていた夢がかなうまで、と思いつつ、ずっと連絡できずにいたのですが、先日思い切って人づてに連絡をしてようやくコンタクトがとれました。数年後に定年を迎えたその方が今まさに生きている人生は想像していたものとは異なるものでしたが、ホストロータリアンと留学生という関係とは違う、別の形の交流が始まるのかもしれません…
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by tomac | 2009-03-13 12:00 | 『「議論」のデザイン』

◆小さなひらめき

思うところがあって、哲学と心理学の研究者が集まる国際会議をのぞいて来ました。普段あまり触れる機会のないトピックだからこそ、意外なひらめきがあったりします。

印象的だった発表の一つに、ロンドンの高校で、哲学・宗教の教師をしながら博士課程で研究中という方の発表がありました。宗教教育は、はじめから絶対的な規範という前提で一方的に押し付けるのではなく、批判的に真偽や善悪を問いながら哲学的に考えさせるような教育が必要ではないかという提案です。うんうん、まったくその通りだな、と思いながら耳を傾けていると、発表後の質疑応答の中で、ただし、生徒たちは題材を深く読み込んだり、きちんと批評することがなかなかできない、という点が課題として挙げられていました。

なるほど、なるほど。

議論の十字モデルがスピーチやプレゼンに役立つということはすでに多くの人が認めてくれていますが、思考の組み立てのための雛形というのは、実は最初のステップに過ぎず、その先にある価値判断の領域に踏み込んだ議論にこそ、このモデルの有効性が発揮されるはずだと自分では考えています。また、そういう議論にほんの少しでも貢献できるのだとしたら、このうえない喜びだと感じます。

日本では、5月から始まる裁判員制度が、そういう場の一つになるのではないかと思っていますが、一般市民の議論による司法判断というものが、はたしてどういう形に落ち着くのか、しばらく様子を見ないと何ともいえないですよね。実態のない形式だけの議論で、とりあえず市民が参加しました、というだけに終わるのかもしれません。そうならないためにも、できることはしたいと思いますが。

一方、たとえば英国の哲学・宗教の教育現場というのは、日本人にはなじみの薄いものかもしれませんが、研究のフィールドとしては面白そうだなあ、と思いました。

今すぐどうこうという話ではもちろんありませんが、そういう可能性も視野に入れつつ、今の自分にできることは、目の前の英文論文を丁寧に仕上げて、どんな形であれ、きちんとパブリッシュするということなんだろうな、と自分に言い聞かせています。
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by tomac | 2009-03-01 21:10 | プロジェクトいろいろ
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